熱中症は炎天下特有のものではなく、湿気の多い時期、日中だけではなく夜間、屋内でも起こる可能性があります。気温が高い、ムシムシする、日差しがきつい、風がない、急に熱くなった時は、体の熱を体外に放出できずに体を冷やせない状況にあり、どんな時でもどんな場所でも注意が必要になります。
1、「熱中症」とは?
熱中症とは、気温が高い環境で生じる健康障害の総称です。体内の水分や塩分などのバランスが崩れ、体温調節が働かなくなり、体温上昇、めまい、倦怠感、けいれんや意識障害などの症状が起こります。 熱中症になった場合には、速やかな対処が必要です。熱中症は、重症度に応じてⅠ度からⅢ度まであります。熱中症の約60%はⅠ度。脱水が進んでいますが、体温調節機能が破綻して体温上昇するのはⅡ度以降。Ⅱ度以降は症状が重篤になります。体温が上がらないⅠ度の段階で対処することが大切です。
重症度 | 熱中症の分類 | 熱中症の対処法 |
Ⅰ度 | ・めまいやたちくらみを自覚する ・筋肉痛やこむら返りがある。 ・拭いても拭いても汗がどんどんでてくる | ・涼しい風通しの良い場所に移動 ・安静にして身体を冷やす ・水分、塩分、糖分を補給する (経口補水液等) |
Ⅱ度 | ・頭痛、吐き気、嘔吐がある ・体がだるい・体に力が入らない・集中力や判断力の低下 | ・Ⅰ度の対応を持続する ・誰かがそばで見守り、症状が改善しなければ病院を受診 ・Ⅲ度に悪化した場合も病院を受診 |
Ⅲ度 | ・意識障害がある ・けいれんが起こる ・運動障害 | ・Ⅰ度、Ⅱ度の対応を持続する ・すぐに救急車を呼び病院を受診 |
2、「脱水症」とは?
脱水症とは、水と電解質(塩分が水に溶けたもの)で構成される体液が汗で失われ、その補給ができていない場合に生じます。脱水症になると血液の量が減少、血圧が低下、必要な栄養素が体に行き渡らなくなり、不要な老廃物を排出する力も低下します。骨や筋肉から電解質が失われると脚がつり、しびれが起こることもあります。
3、「かくれ脱水」とは?
かくれ脱水とは、自覚症状のない脱水症の初期の状態になります。脱水症が進行するまで明確な症状が出にくく、早い段階で有効な対策がとれない場合が多いのです。高齢者の熱中症予防は、「かくれ脱水への対策」がポイントになります。
高齢者が脱水症をおこしやすい環境をできるだけ改善し、外気との温度差がある環境での体温調整の工夫をしてください。食事などで防衛体力を保持することも大切です。座って立ち上がるときにふらついていたり、お話ししていて口が重くなったり、おしっこの回数がいつもより減っている、尿の色が濃くなっているのも水分不足のサインになります。
4、脱水症の予防
熱中症は毎年多くの命を奪う恐ろしい病気です。その熱中症の背景には脱水症が潜んでいます。脱水症を予防することが熱中症を予防するうえで大切になります。
① 日頃からこまめな水分補給をする習慣
のどが渇いていない、汗をかいていないから水分をとらなくても大丈夫と思いがちですが、すでに体液が減少している場合もあります。いつもより尿の色が濃い、量が少ない場合はすでに体内の水分不足が起こっています。
のどが渇く前からこまめな水分、塩分補給をする事が脱水症や熱中症の予防には大切です。熱中症の発生は、当日の水分、塩分不足だけではなく、数日前からの不足が原因で発生します。常日頃から水分と塩分補給を心がけましょう。
② 1日にどのくらの水分補給が必要?
一日に必要な水分量は全部で約2.5リットルですが、1日に必要な水分のうち1.3~1.5リットルは食事や体内でつくられます。よって、残りの1.0~1.2リットルを水分補給する必要があります。一度に大量の水を摂取すると、かえって体内の電解質のバランスが崩れ体調不良を引き起こします。水分補給をする時には、コップ1杯の水を(約120~150ml)を8回に分け摂取しましょう。あわせて塩分の補給も行いましょう。水分と塩分を同時に補給できるスポーツドリンクや経口補水液、また水や麦茶には、塩や梅干しなどを足して塩分も補給すると良い。 緑茶やウーロン茶にはカフェインが含まれているので利尿作用があるため要注意です。
(脱水症の予防 )
内的な予防(脱水症に対する防衛体力を養う) | 外的な予防(脱水症をおこしやすい環境を改善する) |
・無理なダイエットなど食事や飲み物を制限しない ・十分な水分と電解質を補給する ・睡眠をしっかり取って休息する ・適度な運動で筋力を保ち、汗がかける体質になる | ・厚さを避ける服装になる ・風通しを良くする ・無理な節電をしない ・気温、湿度を下げる ・高気温、高湿度等の環境で無理な労働や運動をしない |
3、脱水症の簡易診断
(脱水症の簡易診断)
脱水症の簡易診断(2つ以上あてはまる場合は要注意) | |
・爪をおしたあと、色が白色からピンク色に戻るまで3秒以上かかる ・手の甲をつまみあげた後が戻らない「富士山」ができる ・口の中が乾燥している ・舌の赤身が強い ・舌の表面に亀裂がある ・舌が白いものにおおわれている | ・皮膚に張りがない ・手足が冷たくなっている ・血圧が低い ・脈拍が速い ・体重が減少 ・微熱が続く |
4、経口補水液について
経口補水液とは、発汗により失われた水分、電解質をスムーズに補給するための飲料水です。 体液に近い成分を適切な濃度で含んだ電解質溶液なので、体内に素早く吸収されます。ポカリスエットは健状時の水分補給、オーエスワン(OS-1)は脱水状態時や脱水状態が懸念される時の水分補給に適します。塩分がスポーツ飲料の倍以上入っていますので、高血圧、心臓病、腎疾患などに患っている方は注意が必要です。
(経口補水液の作り方)
500mlの経口補水液 | 1リットルの経口補水液 |
水 : 500ml | 水 : 1リットル |
塩 : 1.5g(小さじ1/4杯) | 塩 : 3g(小さじ1/2杯) |
砂糖: 20g(大さじ2杯) | 砂糖: 40g(大さじ4杯半) |
・水が透明になるまでまぜてとかします。 ・自宅で作る場合は食中毒を防ぐ意味からも、その日のうちに飲み切るようにします。 ペットボトルを再利用して作る時は雑菌が混じらないよう十分に注意してください。 ・1日当たりの目安量。学童から成人は500~1000ml/日。 ・飲むときは、一気に飲むのではなく、冷やさずにゆっくりと時間をかけて少しずつ飲みます。 500mlであれば1時間位かけゆっくりと飲むと良い。 |